新潟大学における「渡部コレクション」の学術利用② 中間素材展示会

「渡部コレクション」には、連続テレビアニメ『夢戦士ウイングマン』(東映動画、1984-85)第12話の脚本、絵コンテ、原画、タイムシートが含まれています。原画は約90%が残存しており、80年代半ばの連続テレビアニメとしてはきわめて珍しいと、同作品の制作会社である東映アニメーションからも評価されています。

2022年から23年にかけて、新潟大学アニメ・アーカイブ研究チームは、東映アニメーション、原作者桂正和氏、集英社から許諾を受けて、原画・絵コンテ・脚本・タイムシートと、それらを使用した映像作家・五島一浩氏のインスタレーション《Peel-Apart TV Anime》を展示する展示会を計3回、入場無料で開催しました。

1.「原画から見る 1980 年代 TV アニメ」(2022年9月7日―11月4日、新潟大学旭町学術資料展示館 科研費基盤研究B(20H01218)の助成による)

同展示の記録映像はこちらから閲覧できます。

下記は同展関連イベントです。

  • アニメ中間素材シンポジウム①「1980 年代テレビアニメを語る」(2022年9月10日、有壬記念館)
  • アニメ中間素材シンポジウム②「アニメ中間素材の創造性 映像作家五島一浩のメソッド を中心に」(2022年9月11日、有壬記念館)
  • 研究報告会「アニメ中間素材 から再考するアニメ研究」(2022年10月2日、有壬記念館)

2.新潟国際アニメーション映画祭関連企画「TV アニメの透視模型(パースペクティブ)」(2023年3月17日―22日、新潟大学駅南キャンパスときめいと)

NIAFF 新潟大学関連企画 TV アニメの透視模型( パースペクティブ) | 新潟国際アニメーション映画祭2023

3.「TVアニメの透視模型(パースペクティブ) in JSAS/SAS大会」(2023年8月19日、20日、横浜国立大学)

展示&上映/Exhibition & Screening | 日本アニメーション学会設立25周年記念 第25回大会 with SAS

上述の展覧会の企画意図はふたつあります。ひとつは、セルアニメ時代の中間素材を使用したインスタレーションによって、セルアニメの仕組みを来場者(市民、学生、研究者)に体感をしてもらいながら、完成品の画面からは見えない原画の素晴らしさを発見してもらうことでした。もうひとつは、アニメ・アーカイブ研究チームが2016年から行ってきた「渡部コレクション」に関する研究の成果を、研究者のコミュニティを超えて、より幅広い層に届けることでした。

2022年開催の「原画から見る 1980年代 TV アニメ」展関連イベントとして、研究者による発表にくわえ、『夢戦士ウイングマン』のシリーズディレクター勝間田具治氏と渡部英雄氏が、80年代の東映動画におけるテレビアニメの演出について語る会も開催しました。

いずれの会場にも研究者だけでなく、市民や学生、さらにはアニメ関係者が訪れました。思春期に楽しんだ懐かしい作品との再会を喜ぶファンがいれば、タップ穴の開き具合から作画用紙の質の違いを看破したクリエイターがいました。妹が駆け出しの動画マンであった頃の思い出を語る市民がいれば、セルアニメの仕組みについて仲間と語る留学生もいました。来場者はそれぞれ、中間素材が伝えるクリエイターたちの仕事を通して、80年代のテレビアニメ『夢戦士ウイングマン』を(再)発見していました。来場者の反応のひとつひとつは、些細なものかもしれません。しかし、こうした中間素材を見る・知る機会を継続して提供することができれば、コンテンツとアニメ制作への理解も進み、結果的にはコンテンツの寿命をさらに延ばすことに貢献できると考えています。

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