本事業について

令和5年度、アジア連携研究センター「アニメ・アーカイブ研究チーム」による研究調査事業「「渡部コレクション」を事例とするアニメ中間素材利活用ルール策定に向けての調査と協議」(以下、「渡部コレクション」調査・協議事業と表記)が、文化庁メディア芸術アーカイブ推進支援事業に採択されました。

文化庁メディア芸術アーカイブ推進支援事業は、「我が国の優れたメディア芸術作品や散逸、劣化などの危険性が高いメディア芸術作品の保存及びその活用・公開等を支援することにより、我が国のメディア芸術の振興に資する」プロジェクトへの支援事業です。

文化庁「令和5年度文化芸術振興費補助金メディア芸術アーカイブ推進支援事業について」

皆様に「渡部コレクション」調査・協議事業内容を紹介し、皆様とともにアニメ中間素材利活用を推進する方策を考えるための第一歩として、このページを開設いたしました。

「渡部コレクション」とは

「渡部コレクション」は、1970年代半ばからアニメ制作に従事してきた渡部英雄氏より、2016年に新潟大学アジア連携研究センター・アニメ・アーカイブ研究チームに寄託されたアニメ中間素材体です。渡部氏はその長いキャリアのなかで、撮影、制作進行、演出、原画など、多くの職種を務めてきました。氏がそれぞれの現場で使用・作成した多種多様な中間素材が「渡部コレクション」を構成しています。

「渡部コレクション」が形成された1970年代から90年代、制作会社による中間素材の管理状況は、2023年現在とは異なり、中間素材のほとんどは、廃棄されることが、暗黙の前提になっていました。しかし、渡部氏は、自身の研鑽のために中間素材を手元で保有し、そこから演出や原画について学んできました。「渡部コレクション」に含まれる中間素材のうち、古いものでは、半世紀近く前の素材があります。

「渡部コレクション」調査・協議事業は、廃棄を生き抜いてきた中間素材の利活用がアニメ文化の継承とアニメ産業の発展に資すると考え、利活用を可能にする条件について、事業主体である新潟大学アニメ・アーカイブ研究チームが、アニメ制作業界関係者、クリエイター、法律家、アニメ展示館運営者から構成される「アドバイザリーボード」とともに、中間素材の社会的・法的位置づけを調査しました。そのうえで、アニメに関する歴史的資料である中間素材にアーカイブという安住の場所を与えるための方策と、その価値を社会に知らしめるための利活用を可能にするルールの方向性についても協議しました。

新潟大学アニメ・アーカイブ研究チームは、「渡部コレクション」が同チームに寄託されて以来、東映アニメーションと東映アニメーションミュージアムからのご理解とご許諾の下で「渡部コレクション」を調査し、『夢戦士ウイングマン』(1984-85)の中間素材展示会開催をはじめ、同社作品の中間素材を学術利用してまいりました。東映アニメーションは、最初の劇場作『白蛇伝』(1958)、最初のテレビシリーズ『狼少年ケン』(1963-65)など、劇場作・テレビアニメ双方の黎明期から、重要な作品を中心に中間素材をアーカイブされ、東映アニメーションミュージアムにて積極的に利活用されてきました。本事業調査も、同社の先駆的実践の延長線上にあります。

事業統括 石田美紀(新潟大学アニメ・アーカイブ研究チーム共同代表)
事業実施 キム・ジュニアン(新潟大学アニメ・アーカイブ研究チーム共同代表)
アルバナ・バロリ(新潟大学アニメ・アーカイブ研究チーム技術補佐員)
アドバイザリーボード
(五十音順、敬称略)
出井甫(骨董通り法律事務所・弁護士)
植野淳子(一般社団法人日本動画協会データベース・アーカイブ委員会・委員長)
神村幸子(クリエイター)
小池利春(新潟市マンガ・アニメ情報館長)
竹内孝次(一般社団法人日本アニメーション教育ネットワーク・理事)
原田央男(日本アニメーション学会員)
山川道子(プロダクションI.G IPマネジメント部 渉外チーム)
渡部英雄(クリエイター、日本アニメーション学会員)
調査協力
(敬称略)
馬場厚成(東映アニメーション 総務部 次長 東映アニメーションミュージアム統括)
近藤修治(東映アニメーション 映像事業部 映像管理室長)

ご意見・ご感想

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