2025年 5月15日(木)「学際アニメ研究会」開催のお知らせ
「学際アニメ研究会」の開催のお知らせ
- 日時:5月15日(木)16:30-18:30
- 場所:新潟大学人文社会研系棟A棟305室(学際日本学PLC室)
- 開催形式:対面
- 主催:科研費基盤研究B(課題番号:25K00427/代表:キム・ジュニアン)
- 共催:アジア連携研究センター
【発表者】(氏・名の順による表記)
ーゲストトーク:マラル・マチユー(フランス・ロレーヌ大学)16:30-17:40(英語;通訳あり)
Discussing Authorship through the Lenses of Anime’s Collective Workflows
/ 「アニメの集団制作工程というレンズから作者性を論じる」(1956-1973)
ーアルト・ヨアヒム(新潟大学)17:40-18:05(日本語)
「戦争を描くアニメをポートフォリオで分析する」
ーキム・ジュニアン(新潟大学)18:05-18:30(日本語)
「英ダラム大学オリエンタル・ミュージアムでのフェローシップ研究報告
〜オリエンタル・ミュージアムはなぜアニメ中間素材を収集するのか~」
【発表の詳細】
ーマラル・マチユー(フランス・ロレーヌ大学博士後期課程)
・概要:(原文)In this presentation, I will outline the stakes of applying traditional studies of authorship to Japanese animation, and how this reflection drove my research to question how the most common forms of authorship can apply to animation. Indeed, the example of the industrialization that occurred in the production of Japanese animation offers remarkable aspects from which to question the traits of authorship commonly admitted in other established art forms. In order to better assess the forms of authorship that seem to manifest in the animation industry, I will present the interdisciplinary methodology I am using, with two case studies that brought me to try and broaden the spectrum of who we define stricto sensu as authors: a summary of the implications made by the total reform of the Japanese copyright law, as well as a discourse analysis of former industry employees sourced from secondary literature. Doing so, I hope to argue that the need arises to debate how authorship manifests in an industrial setting where art production is also met with advanced forms of exploitation and alienation, restraining the rise of authorship found in other art forms, and instead encouraging the dominance of a neighboring stance, that of the “craftsman”.
(和訳)本発表では、伝統的な作者/作家研究を日本のアニメーションに適用することの損益関係、そしてこれに関する考察が、最も一般的に受け入れられている作者性/作家性をアニメーションにどのように適用できるかという問いへと私の研究を駆り立てた経緯について概観する。実際、日本のアニメーションの産業化の事例は、他の確立された芸術形態において一般的に認められている作者性/作家性の特性に疑問を投げかける注目すべき側面を提供している。アニメーション業界に見られる作者性/作家性をより適切に評価するために、厳密な意味での作者/作家の定義の範囲を広げるきっかけとなった2つの事例研究と一緒に、私が用いている学際的な方法論――日本の著作権法の全面改正が含意するところの要約と、二次文献に基づく元業界従事者の言説分析――を紹介する。そうすることで、他の芸術形式のような作者性/作家性の台頭を抑制し、代わりに「職人」という隣接する立場の優位性を促進しつつ、芸術生産が高度な搾取と疎外に直面する産業的環境において作家性がどのように現れるのかを議論する必要が生じると主張したい。
・略歴:フランスのロレーヌ大学博士課程。映画研究が専門で、現在博士論文を執筆中。論文タイトルは「日本のアニメーション産業の構造化における芸術的権威の確立:アニメーター=作家の出現と両義性(1957-1973)」。修士論文は「日本のアニメーション黄金時代における作家的姿勢の台頭:東映動画と虫プロの事例(1958-1973)」。アニメーション産業における職業の社会史、芸術社会学、そして芸術労働・作品の産業史を横断するアプローチを通して、日本のアニメーションを事例とし映画研究の方法論において中心的な役割を果たす「作家性」の社会的地位の形成過程を解明することを目指している。
ーアルト・ヨアヒム(新潟大学経済科学部学際日本学プログラム)
・概要:この発表では、「戦争アニメ」という、第二次世界大戦を歴史的な出来事として描く戦後日本アニメを紹介する。このようなアニメ作品を戦争記憶として分析するために、作品を一つのポートフォリオにまとめ、それらの作品は「被害」や「加害」などの要素について、どのような傾向を表し群れを形成しているか、明確にする。この研究の目的は、「戦争アニメ」が「被害者意識」の表現となっているかどうかを確認することにある。
ーキム・ジュニアン(新潟大学経済科学部学際日本学プログラム)
・概要:本発表では、英ダラム大学のフェローシップに選出され、2025年2月24日から3月21日にわたり行った滞在研究の一部を報告する。同大学付属のオリエンタル・ミュージアムにはエジプトから日本に至る広大な地域から収集された先史時代まで遡る数々の所蔵品に加え、日本アニメのセル画や絵コンテなど中間素材が所蔵されている。今回のフェローシップ研究の主な目的はその中間素材の調査であった。現代日本のポピュラーカルチャーへと広がりつつある同ミュージアムの活動と考え方について紹介する。